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10 RNAの働きとリボゾーム

DNA分子の一部が開裂し、そこに露出した暗号を転写したRNA分子が生まれるという、おもしろい現象は、細胞の核のなかでおこりました。核は、核膜という膜につつまれていますが、そこには、小さな孔がいくつもあいています。その孔から、RNA分子は外にでるのです。

核をでたRNAのたどりつくところにはミクロゾーム(小胞体)という小器官です。 リボゾームには粗面小胞体、滑面小胞体の二種がありますが、いまは粗面小胞体のほうです。これは、ひだのあるまんじゅうみたいな形のもので、表面に小さな雪だるまのようなものが、ゴマをまぶしたようにはりついています。この雪だるまの名前は、リボゾームです。これが、RNAがもってきた暗号を解読する装置なのです。

核をとびだしたRNAは、ミクロゾームまんじゅうの表面に横たわります。すると、その上を、リボゾームがなぞるように動きだします。そして、RNAに転写された暗号を端から解読してゆくわけです。 RNA繩のれんのたれの色が、端から順に、アンバー、ウルトラマリーン、グリーン、チャコール、ウルトラマリーン、ウルトラマリーンだったとしましょう。この暗号は、三つが一組になっています。アンバー、ウルトラマリーン、グリーンはメチオニンの暗号です。チャコール、ウルトラマリーン、ウルトラマリーンはグルタミン酸の暗号です。メチオニンもグルタミン酸もアミノ酸なので、結局、DNAの暗号というのは、アミノ酸を指定するのが役目だったのです。

リボゾームという名の小さな雪だるまがRNAの繩のれんをなぞってゆくと、メチオニン、グルタミン酸というぐあいに、アミノ酸が次つぎにあらわれ、つながってゆきます。そしてそこに、タンパク質がつくりあげられるのです。アミノ酸のくさりは、タンパク質にほかならないからです。

前に、膵臓でサッカラーゼという蔗糖分解酵素がつくられることを記しましたが、この酵素の正体は、ただのタンパク質だったのです。膵臓の細胞核のなかのDNA分子の、サッカラーゼ担当の部分が開裂し、そこでRNAへの転写がおこなわれ、そのRNAがミクロゾームへいって、サッカラーゼを合成したわけです。

ここまでを読んで、一つの大切なことがおわかりのはずです。それは、DNAという親ゆずりの遺伝子の存在の価値をなくさないためには、タンパク質がどうしても必要、ということです。 私たちの口からはいったタンパク質は、タンパク分解酵素によってアミノ酸になります。それが、血液にはこばれ細胞にはいって、リボゾームのところで、私たちに必要なタンパク質につくり変えられるのです。


*この文章は三石巌が会報誌「メグビーインフォメーションVol.12」(1983年12月号)に初めて分子栄養学を勉強される方へ向けて書いたものです。