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19 優先順位は個体差

カスケード理論では、タンパク質でできた漏斗に、ビタミンの水が流れこみ、おちる水が、代謝という名の水車をまわすわけです。すると、タンパク質とビタミンとは、漏斗と水の関係になります。その関係は、たまたまそう考えただけかというと、そんなことではありません。そこには、必然的な、切っても切れない関係があるのです。

もうご存じのとおり、タンパク質は、代謝を媒介する酵素の主成分です。これは、主酵素とよばれます。ここでわかることは、タンパク質だけで酵素ができているわけでわないということです。酵素は、一般的に、タンパク質と、非タンパク質とからできています。タンパク部分は「主酵素」、非タンパク部分は「助酵素」とよばれます。ビタミンは非タンパク部分ですから、助酵素にあたるのです。

カスケード理論では、主酵素で漏斗をつくり、助酵素をそこに流れこむ水にしました。漏斗と水とのどちらが欠けても、水車はまわらない、という関係をつくったわけです。このことから、タンパク質がなくても、ビタミンがなくても、代謝はおこらないという関係がわかると思います。そしてこれは、分子栄養学で強調する点なのです。

ところで、漏斗と水車のセットは、カスケードの段々の一つひとつにあります。その例として、抗壊血病作用の水車と、抗白内障作用の水車とをとることにしましょう。むろんそこには、この二つの作用が代謝による、という仮定がなければなりません。

ここでおこる大きな問題は、二つの水車のどちらが上位にあるかという、優先順位の問題だということは、もうおわかりでしょう。そしてそれが、人によってちがうだろうというのが、私の考え方でした。 漏斗というものには、管の部分がつきものです。その管には、太いものも細いものもあるでしょう。その細いものが上位にある、と私は考えます。なぜかというと、太いものが上位にあれば、滝の水が下までおちてゆくことがむずかしくなります。むろん、水量がたっぷりとないという前提のもとにおいてですけれど。

これと反対に、管の細い漏斗があれば、水が下へおりるのがらくになるでしょう。カスケードの最下段まで、水が下へおりることが理想だとすれば、管の細い漏斗ほど上位にあるのがよいことになります。それは、「生体の合目的性」にかなうことだ、と私は考えます。むろん、それについての説明にはべつのアプローチもあるのですが、それはあとにゆずりたいと思います。

このように考えると、私のビタミンCの抗白内障作用の漏斗は、人なみより太いので、下位にあった、と考えることができます。家内のそれは、私ほど太くない、だから、白内障がおきない、という説明になります。


*この文章は三石巌が会報誌「メグビーインフォメーションVol.21」(1984年9月号)に初めて分子栄養学を勉強される方へ向けて書いたものです。