• 栄養素編
  • コラム編
  • 分子栄養学入門
  • 上級(会員専用)

20 ビタミン必要量の考え方

カスケードの各段にある漏斗の太さを問題にしてきました。その太さは、何によってきまる、と考えたらよいでしょうか。

管が太いということは、ビタミンがたくさんいることを意味します。そこで、同じ代謝に、ビタミンがたくさんいったり、少しでよかったりすることがあるのか、が問題になります。結論から先にいえば、これがある、というのが私の意見です。

酵素というものが、主酵素と助酵素と、二つの部分をもっていることは、もうご承知でした。主酵素は、タンパク質で、その製法は、親から教わっています。これはいわゆる遺伝の現象なのですが、遺伝子というものは、十人十色の主酵素に、助酵素であるビタミンが結合するわけですから、その結合に難易のちがいがあって、ふしぎはないのです。ある人は、その仲が悪いという事態は、めずらしくないはずです。

主酵素と助酵素との仲が悪いとき、その結合体である酵素をつくるのに、助酵素がたくさんいります。そういう場合、漏斗の管が太くなければならないことになるでしょう。漏斗の管の太さは、主酵素と助酵素との仲のよさできまるといってよいのです。その仲のよさを「親和力」ということばであらわすことにします。カスケードの漏斗に管の直径は、主酵素と助酵素との親和力が小さいほど大きいことになります。漏斗の太さは親和力できまるといってよいのです。

ビタミンCが口からはいると、それは、血液にはこばれて全身にゆきわたるでしょう。そして、その持場にくれば、そこで働きをあらわすわけです。そのとき、現実に働きをあらわすのは、まず、ビタミンCが少量ですむ持場でしょう。それはつまり、親和力の大きい酵素が優先するということです。優先するということは、あとまわしにならないことを意味します。少量ですむところがあとまわしになるはずはないではありませんか。これはつまり、親和力の大きい酵素による代謝、つまり、管の太い漏斗が上位にくることを意味するのです。

生体の合目的性からしても、親和力の点からしても、カスケードの上下関係について、同じ結論がみちびかれることになりました。 主酵素と助酵素との親和力には個体差があります。一人びとりちがいます。だから、ある特定の代謝が、Aさんではかなり上位にあるのに、Bさんではずっと下位にある、というようなことがおこるにちがいありません。

ビタミンCばかりではなく、すべてのビタミンに、そして、すべての助酵素について、私はカスケードを想定したいと思っています。この理論は、ビタミンの必要量を考えるうえで、大きな助けになるのです。


*この文章は三石巌が会報誌「メグビーインフォメーションVol.22」(1984年10月号)に初めて分子栄養学を勉強される方へ向けて書いたものです。