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7 ニュートリオロジー

ここまでの話で、分子栄養学というもののアウトラインはおわかりでしょう。それは、遺伝子栄養学、または、DNA栄養学といってよいもの、と私は考えます。

分子栄養学の主張のなかには、従来の栄養学を、古典的なもの、古いものとする思想があります。極端な言い方が許されるなら、古典栄養学は、科学の資格をそなえていない、と考えることができるでしょう。そのことは、古典栄養学の英語が、雄弁に告白していることです。

英語では、栄養学のことを「ニュートリション」といいます。ニュートリションとは栄養を意味することばです。英語では、栄養と栄養学とに、区別がありません。それはつまり、栄養学と日本でいわれるものが、学問になっていないことを証明するものといえましょう。

分子生物学という、新しい生物学が誕生して、すべての生命現象が、科学の光をまともにあびるようになった今日、栄養学がその恩恵に浴して悪いわけではありません。それはつまり、栄養学が、科学としての面目をととのえる時期にきた、ということです。

私の分子栄養学は、そこからきているので、まさに、科学としての資格を備えている、と私は考えます。そこで、この栄養学を、「ニュートリオロジー」と名付けたいと思っています。英語のスペルをついでに書けば、ニュートリションはNUTRITION、ニュートリオロジーはNUTRIOLOGYとなります。 ニュートリオロジーは、ニュートリションの語尾に「ロジー」をつけた形のものです。ロジーはロジックのことで、「論理」を意味します。学問というものは、一般に論理をもっているので、英語では、語尾をロジーとする学問がいくらもあります。その例は、生物学のバイオロジー、心理学のサイコロジー生態学のエコロジー、動物学のゾオロジー、人種学のエスノロジー、地質学のジオロジーなど、枚挙にいとまがありません。

いずれにしても、私たちがこれから勉強してゆく栄養学は、ニュートリションではなく、ニュートリオロジーでなければなるまい、と私は考えます。そのような意識の変革があって、はじめて、栄養物質と生命とのかかわり、栄養物質と健康とのかかわりが、論理的に、あるいは理論的に扱われることになるのです。 なお、ニュートリオロジーを、即、分子栄養学としてよいかどうかが、一つの問題になります。私としては、分子栄養学を「モレキュラーニュートリオロジー」とし、それを省略して、たんにニュートリオロジーということもできる、としたらよいかと思います。 この講座は、ニュートリオロジー講座ということになるでしょう。


*この文章は三石巌が会報誌「メグビーインフォメーションVol.9」(1983年9月号)に初めて分子栄養学を勉強される方へ向けて書いたものです。