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絶版書籍より

  • 不眠よさらば


     床についてもさっぱり眠くならない、眠りたいけれど眠れず、もんもんとしているあいだに時はすぎてゆく、一晩中こんなだったら明日はさぞかし疲れて仕事ができないだろう。その不安な気持ちがよけいに眠れなくします。こんな経験を一回もしたことがないという人は、いわゆる文明人にはいないだろうと思います。
     不眠症という言葉があって、それは無論病気を意味するわけですが、夜になって眠れない人をつかまえて、それをただちに病人扱いにするのも芸のない話です。不眠症という症状をもたらす病気としては、高血圧、うつ病、動脈硬化などをあげることができます。
     投薬中心の医療の常識からすれば、不眠症を治すのには、原因となる病気を治すのが先決だから、高血圧には降圧剤を、うつ病には精神安定剤を、という図式を通そうとします。そして、はっきりした病気がつかめなければ催眠薬の投与ということになるでしょう。これが筋書通りにいけば結構なのですが、確実に効果をあげるのは副作用ばかり、という結果にもなりかねません。眠れない眠れないという人を調べてみると、じっさいはかなりの睡眠時間をとっているケースが大部分だといわれます。夜中の物音を一つ残らず聞いていたといっても、その瞬間だけ目を覚ましたのであって、前後はぐっすり眠っているのが普通だと、よくいわれます。結局は、眠れない眠れないと自分に暗示をかけるのが、ありふれた不眠症ということでしょう。
     友人T夫人は、一流企業の幹部で過重な勤務のため、体調を完全に崩していました。T夫人の令兄はマスコミにも登場する医学界の大立物ですが、彼女の症状に対してさっぱり相手になってくれません。それで私は、例によって高タンパク、高ビタミンをはじめ、リンパマッサージを勧めたところ、すっかり元気になりました。ただ、残ったのは不眠症です。私はそこで、ビタミンB12と、ユビキノン(コエンザイムQ10)とよばれる脂溶性ビタミンを勧めたところ、その晩から彼女はぐっすり眠れるようになりました。不眠の人はまずビタミンB12を0.5mg服用してみて、うまく眠れなかったらユビキノン20mgを服用してみては、と思います。それでなければセレンがよいでしょう。これは100μg程度です。
     睡眠をさそう物質ほ、セロトニンという名のホルモンです。それの合成に、これらのビタミンが介入しているのかも知れません。セロトニンの原料は、アミノ酸トリプトファンですから、肉類などトリプトファンの多い良質タンパクをとることは、不眠解消の条件といえると思います。なお、私は鉛中毒で伸筋麻痺がありますので、リンパマッサージを受けています。
     ところで、血中の二酸化炭素が不足すると、頭がぼんやりしてきます。寝つきの悪い時、ノールズの呼吸法で、二酸化炭素を徹底的に追い出すのも良いようです。

    ※ノールズ呼吸法とは
     ウィリアム=ノールズは、無残気呼吸を提唱して、多くの慢性気管支炎や肺気腫の患者を救いました。彼によれば、この呼吸法は呼吸器の病気に良いのです。肺のなかの酸素の濃度が高いことは、血液中の酸素が多く、二酸化炭素が少ないことを意味します。これが全身の細胞の活動にとって有利な条件で、呼吸器の機能の改善に役立ち、気分は爽快になり、夜はよく眠れるはずです。
     ノールズは呼吸法について次のように教えます。まず、息を吐きます。すっかり吐きおえたところで、口をすぼめて狭い出口を作り、さらに息をしぼりだすのです。 また、別の方法として朗読もあります。息を深く吸い込んでおいて読みはじめ、一息でこなせる行数を数えます。毎日これを続けると、行数が増え、無残気呼吸の練習と肺活量の増大と、一石二鳥の効果をあげることができるそうです。また、吸気には3歩、呼気には7歩という歩行法もあります。

    【三石巌 全業績-4「日常生活の健康情報」より抜粋】

  • 律神経失調症はストレスから


     わけのわからない複雑な症状のある人は、よく自律神経失調症だと診断されます。しかし、自律神経といっても、語感がぴんとこないことがあるだろうと思います。これを“自動制御神経” と改名したら、誰にもわかりやすくなるだろうというのが私の意見です。
     自動制御といえば、飛行機を例にとると、風か何かの原因で高度が高くなろうとした時下げ舵を引き、低くなろうとした時上げ舵を引くようなことです。そこには対立関係があって、二つの兼ね合いがうまくいけば、自動制御が成り立つということです。自律神経もまさにそのとおりで、血圧を上げる作用と下げる作用との兼ね合いで、血圧の自動制御ができるというのです。
     身体の自動制御には神経の他にホルモンも関係するので、実際は複雑なものです。それにしても、私たちの内臓は自律神経の支配下にあります。これが狂うと、飛行機の自動操縦装置が狂ったようなもので、機械を止めずに治そうとなると、これは至難のことといえます。高血圧や胃潰瘍などがおいそれと治らないのも、自律神経失調症が原因だからです。
     例え話を続ければ、上げ舵にあたるのは交感神経、下げ舵にあたるのは副交感神経で、この二つの対立の兼ね合いで、内臓の自動制御がおこなわれるのです。交感神経が亢進すると、末梢や消化器の血管は収縮し、脳や心臓や骨格筋の血管は拡張して攻撃態勢をとります。副交感神経はその反対だと思えば良いのです。
     自律神経失調症というのは、このバランスが崩れ、どちらかの緊張がとけない状態です。それが交感神経ならば、高血圧、動脈硬化、心不全、心筋梗塞などにつながり、副交感神経ならば、胃潰瘍、気管支喘息、常習性便秘などにつながります。季節のかわりめは自動制御の調子をかえる時期にあたるので、自律神経が失調しやすいものです。自律神経症にとって、激痛、空腹、酷寒、酷暑など、憤怒、不満、心労などは大きな負担になります。それに耐えかねた状態がストレスであって、このとき自律神経のバランスはくずれ、胃の出血や副腎の肥大がおきます。
     医師にかかれば精神安定剤や交感神経ないし副交感神経の遮断剤などを与えられるかと思いますが、これはホルモンに介入する薬なので副作用が心配です。コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインで交感神経の働きを助けるとか、レシチンやニンニクで副交感神経の働きを助けるとかでバランスを回復する工夫があってよさそうなものだと思います。カフェインは、交感神経にスイッチをいれるホルモンの分解を妨げます。
     副交感神経の情報伝達にはコリンというビタミンの誘導体が働きます。レシチンにはコリンがあるのです。ニンニクは副交感神経にスイッチを入れるホルモンの分解を妨げます。

    【三石巌 全業績-4「日常生活の健康情報」より抜粋】

  • ストレスに強くなる法


     リューマチとか、湿疹とか、喘息とか、しまつの悪い病気はうんざりするほどあります。そういうやっかいな病気を200種にわたって一掃するほどの力をもった薬があります。その名は副腎皮質ホルモンです。
     これは、コーチゾン、ステロイドホルモン、ステロイドなど、いろいろによばれています。これを発見したヘンチは、当然のこととしてノーベル賞をもらいました。このステロイドは薬として売られてはいますが、本来ならば副腎皮質で作られるものです。だから、ステロイドで治る病気は、例外なしに、副腎皮質の働きが完全ならば、かからずにすむ病気と考えるのが正しいと思います。
     M夫人は引越しのあとで慢性関節リューマチになりました。それで、トースターのプラグをコンセントに差し込む程度の作業もできなくなりました。Y嬢は玄米食をやりだしたら全身性エリテマトーデスになりました。全身にわたって墨のように濃い赤紫の大きな模様におおわれ、起きていられなくなりました。こういう病気には、ステロイドだけがものをいうのです。
     副腎皮質は、ストレスや炎症が引き金になってコーチゾンを作りだします。このホルモンは、ストレスによる被害を抑え、炎症を治す役目をもっています。そして、副腎皮質がこれを作る代謝には、少なくとも、ビタミンC・Eが必要です。無論、タンパク質も必要です。そこで、ストレスがおきそうだとしたら、これらの栄養素を十二分にとって、ステロイド合成代謝をスムーズに行なわせればよいということになります。むしろ、先手を打って、普段から高タンパク、高ビタミンをとって、ストレスに強い身体の持ち主になってみてはいかがでしょうか。副腎皮質ホルモン適応症の病気が、高タンパク、高ビタミンで回復した例はびっくりするほどたくさんあります。
     つぎにステロイド剤の副作用を並べておきましょう。
      ○ 身体タンパクをブドウ糖に変え、血糖値をあげる → 糖尿病。
      ○ 脂肪を首から上に移動させるので、手足が痩せ、顔が丸くなる。
      ○ 筋肉のタンパク質が解け、全ての筋肉が細くなり、力が抜ける
        → 筋萎縮、筋無力。
      ○ 抗利尿ホルモンが抑制されるので、尿の量が増える。
      ○ 血液では、リンパ球が減って、赤血球が増える。
      ○ 皮膚は紙のように薄くなり、紫色の縞ができる。感染しやすくなる。
      ○ 骨ではカルシウムが抜け、背骨が変形する。背骨や肋骨の骨折
      ○ 動脈硬化の促進 → 高血圧。
      ○ 胃酸が増え、タンパク消化酵素が増える → 胃潰瘍。
      ○ 精神は不安定になり、うつ病気味になる。
      ○ 傷が治りにくくなる。
      ○ 抗体ができにくく、感染に弱くなる。
      ○ 男性化する。毛深くなり、声が太くなる。ニキビができる。

    【三石巌 全業績-4「日常生活の健康情報」より抜粋】

  • 自律神経とはどういうものか


     自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」と、二つの相反する働きをもつ神経とで構成されている。自律神経は自動制御神経という呼び名がふさわしい、と私は思っている。交感神経も副交感神経も、「延髄」から出発した神経は、脊髄を通って「仙髄」まで下りている。交感神経は、脊髄と仙髄から体表まで伸びている。副交感神経は、延髄と仙髄から各臓器に伸びている。自律神経の走路は解剖的にとらえにくく、どこにあるのかわからない。
     ハリ、キュウのツボは、自律神経の走路上にあると想像されている。交感神経が働くと、血液は脳、心臓、骨格筋に集中し、気管支は拡張し、戦闘体制をとる。このとき消化器官は活動を停止する。副交感神経が働くと心臓の活動は抑制され、消化器官はよく活動する。交感神経と副交感神経との働きはバランスが必要である。このバランスが崩れれば「自律神経失調症」である。副交感神経機能が亢進すると、高血圧、動脈硬化、心不全、腎不全となる。このとき交感神経遮断剤が降圧剤になる。

    【三石巌全業績ー11 健康ものしり事典 P127より抜粋】

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